戸籍・住民票の違いから見る非実在高齢者

足立区で「住民票」では、111歳で存命の人が実はすでに30年前に死亡していたことがあきらかになったことから始まった、一連の「非実在高齢者」問題ですが、「戸籍」上、どこまで年長の人が存命であるかを競うレースのような観もあります。


足立の「111歳」家族逮捕 区が支給金返還請求へ : 東京23区 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20100828-OYT8T00090.htm

都内最高齢の113歳女性所在分からず 杉並区 - MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100802/crm1008021723021-n1.htm

壱岐で200歳「生存」 ショパンと同い年 : 週間ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20100828-OYS1T00188.htm


しかし、この問題、なにが問題なのか、自分のなかで「戸籍」と「住民票」がごっちゃになっているきらいがあったので、ちょっと整理しました。

Togetter - 「「戸籍」と「住民票」の違いから考える非実在高齢者問題」 http://togetter.com/li/45012

戸籍と住民票の違い

戸籍 - Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%B8%E7%B1%8D

住民票 - Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%8F%E6%B0%91%E7%A5%A8

◆住民票とは、
市区町村が住民について「住んでいる」ことを証明するものです。市民に交付する住民票には、「氏名」「生年月日」「性別」「住所」「住民となった年月日」「届出日」などが載っています。「世帯主の氏名・世帯主との続柄」「本籍・筆頭者」「住民票コード」も要望により載せることができます。

◆戸籍とは、
日本人が出生してから死亡するまでの身分関係(出生、結婚、死亡、親族関係)などについて、記録・証明するものです。これらの内容を元に本人確認や相続手続きなどに利用されます。
現在の戸籍は、原則として1組の夫婦及びその夫婦と同じ姓の未婚の子を単位としてつくられており、本籍地に置かれます。
戸籍の一番最初に記載してある人を「筆頭者」といい、「筆頭者」は死亡しても変わりません。
戸籍には「本籍」「筆頭者氏名」、同じ戸籍に記録されている者の「名」「生年月日」「父、母の氏名」「出生地」「婚姻日」などが記録されています。(住所は記載されていません)

更新日[2010/04/01]
住民票と戸籍の違いについて教えてください。

住民票は「今住んでいるはずの場所」「人単位」で管理されています。 年金の手続や、公立小学校への入学の案内は、住民票をベースになされています。

戸籍は「本籍地」で「筆頭者単位」で管理されています。 戸籍が使われるシチュエーションとして、最も多いのは相続のときでしょうか。 超高齢の人が生存扱いになっているからといって相続の手続で問題になる場面は想像しづらいです。

  • 住民票のメンテが行きとどいていないのは、無駄な年金支給をすることになるので問題
  • 超高齢の死亡扱いになっていない人の情報が「戸籍」に残っていたからといって、それほど重大な問題ではない

というのが、整理した考えです。

死亡扱いにならない理由

では、なぜ、死亡扱いにならないのでしょうか。 役所が悪い?…とばかりはいえなさそうです。

死亡届を出さない・出せない

まず、その人が死亡したことを、役所はどうやって知るかです。 実は、死亡届を誰かが出してくれない限り、役所側は知りようがありません。 この結果、住民票上いつまでも「生きている」ことになり、年金の不正受給ができてしまうわけですね。

また、身寄りがなく行旅死亡人(行き倒れ)になってしまった場合も、死亡届が出てきません。 ボランティアでの活動である民生委員が面倒を見るにしても限界があるかと。

戸籍で死亡扱いにならない

死亡届が出されたとしても、戸籍は本籍地にあります。 たとえば、私の場合、住民票は東京都、本籍地は千葉県だった時期がありました。戸籍上は親にぶらさがっていたわけです。

役所のなかの人ではないので想像にすぎませんが、死亡届が出されたら、本籍地に対して、死亡の連絡を入れ、受けた側は戸籍に死亡の記録をつけるという運用が必要になるなずです。 戦中、戦後の混乱していた時期はこのような運用が徹底していなかったのではないでしょうか。

死亡届を出さない理由

身寄りがあるのに出てこない理由は経済的な面にあるかと思います。 葬式を出さなきゃいけないので一時的に費用はかかるし、毎月のことを考えると、今までもらえていた年金分が収入減少です。 死亡届出さないほうが得ですよね。 Wikipediaによれば、死亡届を提出するのは、依頼された葬儀業者らしいので、死んだことを隠して、葬式出さなければ問題ないですね。(いずれバレますけど)

戸籍・住民票をキレイにたもてていたのは、なぜ?

住民にとってメリットがあった

住民側からすると、ちゃんと届を提出するという努力が必要になりますね。 住民票の異動をきちんと屆けることで、公立学校で教育をうけることや、選挙権を行使することができます。

あと、生活していく上で住民票を提示しなくてはならない場面はそこそこあるので、ちゃんと屆けを出す動機付けにはなりそうです。 こういったメリットがあると住民票はちゃんとメンテされる。

でも…自動車を買わなかったり、子どもがいないので教育も関係ないし、選挙もどうでもいいやー、どこに屆ければいいかよくわからないし…という層には通じないメリットではあります。 年金もらえなくなるのはデメリットになってしまいますね。

葬式を出す文化のおかげ?

Wikipediaで死亡届の記事を見ていたら、

死亡届の記入及び提出は遺族自身が行うケースは少なく、葬儀業者に依頼する場合がほとんどである。
死亡届 - Wikipedia

という記載が。

死亡届は死亡診断も必要なので、

  • 病院で死亡確認
  • 葬儀を出す

という流れからはずれると、出すのが面倒になりそうです。 自宅で死亡したら隠すことができるのも「道理で」という感じです。

戸籍・住民票の情報を正確に保つには

行政側からの定期的な確認

特に問題になるのが、年金の受給ということであれば、杉並区でやっていたように、直近行政サービスを利用しているかどうかを定期的に確認するのがよさそうです。

住民側からの確認

住民側が住民票をきっちり動かしていても、戸籍がどうなっているかわかりません。 相続などがからむ場合には、戸籍謄本、戸籍抄本を家族構成が変化したタイミングで確認しておくのが自衛策になりそうです。 自分のルーツを戸籍から探るのも、「トレンド」らしいですよ。

自分のルーツを探る!「戸籍」をたどって家系図づくり | 月刊マガジン マネット http://www.ma-net.jp/archives/2010/03/post_281.html

立法

80歳以上が年金を受けとるためには、戸別訪問を行なっての確認を年1回実施すること…という法律を作ってしまうというのはどうでしょう。雇用も創出できそうです。 今のタイミングなら、これだけのコストを出す納得感も得られるかもしれません。

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