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『失敗の本質』~過去の呪縛

『失敗の本質-日本軍の組織論的研究』を立ち読みして、ひっかかるところがあったので購入しました。

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この本、実は買ったのは2冊目。家に帰ってから気がついた... どうやら「戦略」とか「戦術」のキーワードが好きだった、中学生のときに買っていたらしい。(文庫版初版は1991年、単行本として出版されたのは1984年) 社会人になった今、気になるポイントは中学生当時とはぜんぜん違っているのは確かでしょう。なにせ持っていたのをわすれたくらいですから。

テーマと結論

本書のテーマは、「日本が大東亜戦争に敗北した原因を組織論の観点から探る」です。 そして、結論を言うと、「日露戦争の成功体験を踏襲し、修正できないまま、戦争が続いたから」ということになります。

日露戦争の成功体験は、陸軍においては「銃剣突撃万能主義」、海軍においては「大艦巨砲主義」として、日々の活動を通じて固定化・最適化の活動が、組織の文化として、積み重ねられていく。 そして、現場が「銃剣」の時代ではなく、「火力」の時代に変わったことを気がついても組織として共有することもなく、今までの考え方を捨て去ることができなかった。

会社組織

今所属している会社(SIer)に当てはめて考えてみると、恐ろしい感じがする。 「過去の成功体験」があり、「プロセスの標準化」としてそれを固定し、大規模プロジェクトに「最適化」された形で組織が形成されている。人事評価については憶測の域を出ないが、大規模プロジェクトをこなすプロジェクト・マネージャーが高評価を得る文化は間違いなくある気がする。 現場はウォーターフォールがんじがらめの開発に非効率と限界を感じつつあるのに、上司は今までやってきたやり方を変えていくリスクをとることはせず、今までやってきたやりかたを強制する...

自己変革できる?

本書の最後の一節を引用する。

p.400

日本軍同様、過去の成功体験が上部構造に固定化し、学習棄却ができにくい組織になりつつあるのではないだろうか。 日本的企業組織も、新たな環境変化に対応するために、自己革新能力を創造できるかどうかが問われているのである。

結局変われるかどうかなんだよな...

組織の強みを追求していくことは、その強みが弱みに変わったときに、新しい強みに対して組織全体をシフトしにくくすることにつながるのではないか。

固定化・最適化の動きは、日々の企業活動の他、新卒の就職活動でも追求されているような気がします。 企業側がミスマッチを恐れるあまり、「仕事の実際」を納得してもらった上で、入社してもらおうとする動きがあるようです。これは固定化・最適化をいっそう促進するほうへ作用していきます。 考え方を変えなければならないほど、環境が変わったとき、「こんなはずではなかった」と言う人間を大量生産しているだけではないか?

感想と想定読者

この本を読んでいると、自らが属する組織に思いをはせざるを得なくなってきます。 自分の所属している組織のありように疑問を感じているとしたら、どう変えていけばいいのか、考えるきっかけが本書にはたくさん埋め込まれているように思います。