東洋経済2015大予測を振り返る

年の瀬もせまり、2016年の展望を掲載する経済誌や本が売られる季節となりました。

週刊東洋経済 2015年12/26-2016年1/2新春合併特大号[雑誌]

週刊東洋経済 2015年12/26-2016年1/2新春合併特大号[雑誌]

毎年の風景なのですが、去年の今頃はどんな予測となっているのか振り返るべく、昨年の東洋経済より「2015大予測」と銘打った記事を確認してみたいと思います。テーマは検証のしやすさから日本経済を選びました。

年始に出題・回答を行い、年末に答え合わせをする「クイズ正解は一年後」という、番組がありますが、要するにちゃんと答え合わせしようよということです。

www.tbs.co.jp

01 日本株

日経平均株価の予想をしています。

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高値の予測で多かったのは、18,500円と19,000円というもの。 安値は16,000円が最多でした。

12月25日終了時点で、

  • 年初来高値:20,952.71(2015年6月24日)
  • 年初来安値:16,592.57(2015年1月16日)

ということで、高値はずいぶん上を行きましたね。

02 米国株

こちらはNYダウの高値を予想しています。

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19,000以上の意見がおおいですね。 さて実際は。

18,351.36ドルでした。それほど、上がらなかったんですね。

さて、記事の中で登場するFRB利上げですが、つい先日利上げすることが決定しました。

その利上げ時期については、「15年半ば」がコンセンサスだが、「10月以降に後ズレ」との見方も根強い。 理由は原油安と賃金の伸び悩みなどによるインフレ率の下振れ懸念だ。

www.asahi.com

FOMCの声明では、米国内の雇用環境は「今年に入り、相当な改善があった」と指摘。「年2%」の目標を下回る物価上昇率も、原油安などの一時的な要因がなくなれば、「中期的に目標に近づくとの相応な自信が持てた」とした。

こちら、記事の中にあった時期も見立てもそのとおりの展開になりました。 どのような指標がターゲットを達成すれば、なにを変更するのか…はっきりしているのは予想のしやすさにもつながるのですね。

03 為替・04 ユーロ円

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ドル円

ただ、市場関係者の間では、同氏(駐・大和証券の亀岡氏)のような意見は今のところ少数にとどまる、15年には125円~130円まで円が売られる展開を想定する向きが少なくない。

エコノミストの予想も125円までの円安を予想する向きが多かったです。

答えは…125円57銭(6月5日)でした。 ほぼずばりでしたね。

こちらでもFRBの利上げの影響を気にする内容となっています。 利上げ時期の予測を2015年12月に変更した米シティグループすばらしい。

ユーロ円

こちらでは、1ユーロ=140円前後まで、ユーロが下落する展開を想定する見方が有力と紹介されています。 (つまり円高ユーロ安) この記事が作成されたころ、2014年12月5日には149円15銭を記録しています。円安ユーロ高ですね。

で、2015年もっともユーロ安が進んだ結果は…

126円90銭(4月13日)まで行きました。12月26日現在は134円くらいで推移しているようです。 ずいぶんユーロは安くなってしまったんですね。

05 エネルギー価格

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2015年開始時点でエネルギー価格は低下しそうだというのが基調になっています。供給が増え、需要は新興国の成長減速で鈍化ということで価格低下するとということでした。

実際ここのところ、街で見かけるガソリン価格は下落気味ですね。 では、エコノミストの予想であげられている、WTI原油価格の最高値と最安値はいかほどだったのでしょうか。 エコノミストの予想は、高値は100ドル、安値は50ドルの幅でした。

  • 最高値:61.36ドル
  • 最安値:35.39ドル(12月22日)

安い!安いよ!エコノミストの予想の下限をうわまわる安値っぷり。実際のところ、年前半で50ドル割り込んでいましたからね。 エコノミストのみなさんの予想は、どうして外れてしまったのか、気になります。最安値50ドルをつけた熊野氏、熊谷氏の予想がいちばん近かったです。

06 消費者物価

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日銀の黒田総裁が消費者物価上昇率2%をできるだけ早期に実現するとして、量的質的金融緩和を導入をめざしていたこちらですが…原油価格の下落が要因となって厳しいとの見通し。

www.jiji.com

10月時点でのIMF推計では0.73%という状況です。1%未満と予測した、4名のエコノミストのみなさんが予想に近くなりそうですね。

記事では、「円安になれば物価上昇するかもよ」のトーンでしたが、円安基調になった現在でも、物価上昇の気配はないですね…。

07 賃金

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実質賃金伸び率がエコノミストの予想として掲載されています。幅は2.1%からマイナス0.8%。 アベノミクスが始まって以降、実質賃金はずっとマイナス。物価の上昇に比べて、賃金が変わっていないので、購買力は落ちる一方です。で、政府が賃上げを要請したのが2014年末の状況でした。

毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)|厚生労働省

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/Xlsdl.do?sinfid=000027582956

えーとこれはどう読めばいいんだ?実質賃金について、規模が30人以上で、調査作業計というのを調べましたが、

  • 第一四半期(1月-3月):-2.3%
  • 第二四半期(4月-6月):-1.7%
  • 第三四半期(7月-9月):+0.3%

という結果に。ここまでの平均は-1.2%ということに。最低予想をさらに下回る状況となっています。 これ第4四半期がよほど挽回できていないと、実質賃金はマイナスになりますよね。 (私の表の見方がもしかして間違っているんじゃないかと思いますが、今年前半はずっとマイナスの値をつけていたのはたしかです)

物価も狙ったほど上がっていないし、実質賃金もマイナスでは経済政策、今のところいまいちということでよいんでしょうか。

08 個人消費

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エコノミストが予想しているのは民間最終消費支出(家計最終消費支出と対家計民間非営利団体最終消費支出の合計)の伸び率です。予想の幅は、0.6~2.5%で緩やかな回復に向かうというのが全般的なトーンです。

四半期別GDP速報 - 内閣府 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sokuhou/sokuhou_top.html

それぞれの期の前年比を見てみましょう。第三四半期(7-9月)までの二次速報値が公表されています。 www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf

上記URLのPDF、6ページめを見ると…

  • 第一四半期(1月-3月):-4.2%
  • 第二四半期(4月-6月):0.1%
  • 第三四半期(7月-9月):0.4%

こちらも第四四半期で盛り返さないととてもじゃないけどプラスには持っていけないですよね。 2016年3月に第四四半期の二次速報がでるみたいなのであらためて確認しましょうか。

09 不動産市場

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オフィスは好調、住宅市場は横ばいとの予想が基調になっている記事です。 エコノミストの予想は地価は上がるか?という問いに対して、上がるの回答が21人、上がらないが1人、下がるが1人でした。

地価は、年に二回、「都道府県地価調査」(7月時点を9月公表)というものと、「公示地価」(1月時点を3月公表)でわかります。 2015年全般の動きということであれば、2016年3月の「公示地価」を見るのがよさそうですが、2015年に2回発表されている、それぞれの「概要」を見てみましょう。

平成26年1月以降の1年間の地価について

○ 全国平均では、住宅地が下落率は縮小し、商業地は横ばい(0.0%)に転換。

○ 三大都市圏平均では、住宅地、商業地ともに上昇を継続。また、地方圏平均では、住宅地、商業地ともに下落率縮小。

○ 都道府県地価調査(7月1日時点の調査)との共通地点で半年毎の地価動向をみると、全国の住宅地は前半0.3%の上昇、後半は0.2%の上昇。また、商業地は前半・後半ともに0.5%の上昇。

○ 上昇地点数の割合は、三大都市圏では、住宅地の5割弱の地点が上昇、商業地の7割弱の地点が上昇。一方、地方圏では住宅地、商業地ともに上昇地点及び横ばい地点は増加しているが、依然として7割弱の地点が下落。

平成26年7月以降の1年間の地価について

全国平均では、住宅地、商業地ともに依然として下落をしているものの下落幅は縮小傾向を継続。

三大都市圏をみると、商業地については総じて上昇基調を強め、住宅地については、東京圏・名古屋圏で小幅な上昇を継続。

地価公示(1月1日時点の調査)との共通地点で半年毎の地価動向をみると、全国の住宅地は前半0.2%の上昇、後半は0.3%の上昇。また、商業地は前半0.5%の上昇、後半は1.1%の上昇。

上昇地点数の割合をみると、三大都市圏では、住宅地の4割以上の地点が上昇、商業地の7割弱の地点が上昇。一方、地方圏では住宅地、商業地ともに上昇地点及び横ばい地点は増加しているが、依然として7割以上の地点が下落。

都道府県地価調査にある、地価公示時との比較でいくと「地価は上昇傾向」にあるみたいですね。

ただ、最後の一文が地価公示時のものと矛盾してはいませんか…? 「上昇地点と横ばい地点が増加」しているならば、下落している地点は減っていそうなものですが、

  • 地価公示(1月時点):依然として7割弱の地点が下落
  • 都道府県地価調査(7月時点):依然として7割以上の地点が下落

下落地点増えてるんじゃない?

10 国内景気

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エコノミストの予想は、GDP伸び率です。予想の幅は0.7%~1.9%。 見る資料としては、個人消費の項で見たGDP速報と同じです。

四半期別GDP速報 - 内閣府 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sokuhou/sokuhou_top.html

個人消費と同様にそれぞれの期の前年比を見てみましょう。第三四半期(7-9月)までの二次速報値が公表されています。 www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf

  • 第一四半期(1月-3月):-1.1%
  • 第二四半期(4月-6月):0.7%
  • 第三四半期(7月-9月):1.6%

こちらはここまでちょっとプラスで推移しています。第一四半期は、前年が消費増税前の駆け込み需要との勝負になるので不利はいなめませんが、前年比なんとかプラスでもってこれそうということでしょうか。

11 設備投資

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こちらは、民間企業設備投資伸び率の予想です。エコノミスト予想の幅は0.8~10.7%で中央値は4.3%です。 見るのは、個人消費、景気の項と同じ資料です。

四半期別GDP速報 - 内閣府 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sokuhou/sokuhou_top.html

前の二つ(個人消費、GDP)と同様にそれぞれの期の前年比を見てみましょう。第三四半期(7-9月)までの二次速報値が公表されています。 www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf

  • 第一四半期(1月-3月):-1.3%
  • 第二四半期(4月-6月):1.1%
  • 第三四半期(7月-9月):2.2%

こちらは明確にプラスに転じています。ただ、エコノミストの予測よりも伸びが低いかもしれませんね。3月の第四四半期の結果をまちましょう。 記事にもありますが、低金利の状態で、機械の更新を先延ばしにしているということは、景気の見通しは暗いと考えている企業が多いということなんでしょうね。

12 財政

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こちらの記事でのエコノミスト予想は、「20年度プライマリーバランス目標達成は可能だと思うか?」という問いで、答えが出るのは5年後なので評価は割愛します。

2020年度までにプライマリーバランスを黒字化するのが「国際公約」となっています。 目標達成のためには歳入を増やす、歳出を減らすが基本線だと思いますが、2016年度予算の閣議決定のニュース記事を見ておきましょう。

www3.nhk.or.jp

政府は、社会保障や防衛、公共事業など「政策にあてる経費」を「税収」や「税外収入」でどれだけ賄えているかを示す『基礎的財政収支』を財政健全化の指標としています。

国の一般会計の『基礎的財政収支』は、今年度当初予算では13兆4000億円の赤字でしたが、来年度予算案では税収が増えることなどから10兆8000億円と赤字幅が2兆6000億円縮小する見込みです。 政府はことし6月に策定した「経済・財政再生計画」で、国そして地方も合わせた『基礎的財政収支』を2020年度までに黒字化することを財政健全化の目標としています。

ただ、ことし7月時点の内閣府の試算では、再来年4月に消費税率を10%に引き上げても2020年度の『基礎的財政収支』は国と地方を合わせて6兆2000億円の赤字が残り、このままでは目標を達成できないという厳しい見通しとなっています。

さらに、来年度の税制改正大綱で再来年4月、消費税率の10%への引き上げと同時に導入される軽減税率で新たにおよそ1兆円の財源が必要となり財政健全化目標のハードルはより高くなっています。

このため政府は計画で掲げた、実質2%、名目3%の高い経済成長率を確実に実現し税収をさらに増やすとともに、歳出を抑える大胆な改革に乗り出すなど『基礎的財政収支』の黒字化を実現するための道筋を明確に示すことが急がれています。

歳出削減の動きはなさそうですね。

13 長期金利

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エコノミストの予想は長期金利の予測。日本の長期金利の予測についてみてみましょう。だいたい上限は1%、下限は0.5%までの幅で予想されている方が多いようです。

www.bb.jbts.co.jp

この記事が書かれるためにエコノミストのみなさんは2014年11月末実施のアンケートに回答しています。2014年12月25日の0.310%という数字をみたら同じ予想になったのかなあ、とちょっと気になるところです。この1年、上は、0.54、下は0.19の幅で長期金利は動きました。見づらいグラフではありますが、左端の吉川氏が一番予想に近そうに思えますね。

まとめ

全般的に、もっと物価もあがり、賃金が上がって、個人消費も回復、景気感がよくなり、長期金利ももう少し上がっていたはずだったのになー…というのがエコノミストのみなさんの本音というところでしょうか。

2020年の東京オリンピックも決まって、1年前はもうちょっと明るい未来が待っていそうな気がしていたんですかね。

こういった「大予測」をされた際には、どうして予測とずれてしまったのか、1年前の思惑との違いがしりたいです。

1年後のことはよくわからないけど、がんばろう。