
あなたは今、どんなキーボードを使っていますか?
PCに付属していたものをそのまま使っている人もいれば、家電量販店で「なんとなく」選んだものを使い続けている人もいるでしょう。私もかつてはそうでした。キーボードは「付いてくるもの」であって、「選ぶもの」ではなかったのです。
この記事では、私のキーボード遍歴を時系列で振り返りながら、それぞれの段階で「なぜ乗り換えたのか」を書いていきます。キーボードに興味が出てきた方にとって、何かしらのヒントになれば嬉しいです。
第1章: 原点 — PC-9801付属キーボード 1990年
引用元: PC-98 キーボード https://nkmm.org/yagura/kbd/
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| キーボード名 | NEC PC-9801付属キーボード |
| キー数・配列 | フルサイズ / PC-98独自配列 |
| スイッチ | NEC製リニアスイッチ |
| 接続方式 | 専用コネクタ |
私のキーボードとパソコンの遍歴は、PC-9801から始まります。 キーボードの「選択肢」という概念はまだ生まれていなかったはずの時代の話です。 手元に画像はありませんが、記憶をもとに探した画像をのせております。 スペックなどは当時まったく気にしていませんので、検索した情報を記載しております。 なにより、打鍵感は心に残っていました。
2000年前後にはWindows PCが主流になり、ただ付属品のキーボードをそのまま使っていましたが、 「あれ?なんか、PC98のころより打ち心地悪い…?」と疑問に思ったのです。 あと大学のコンピュータ棟で使われていたキーボードがHHKBだったのも贅沢方向にふれる原因だったかもしれませんね…。 (今回は自前で入手したキーボードを主に語るので列伝からははずします)
第2章: メカニカル — FILCOフルサイズ 2005年ごろ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| キーボード名 | FILCO Majestouch(フルサイズ) |
| キー数・配列 | 108キー / フルサイズ |
| スイッチ | CHERRY MXスイッチ |
| 接続方式 | USB有線 |
PC-98の時代が終わり、Windows PCに移行。最初はPCに付属のメンブレンキーボードを使っていましたが、ある時ふと立ち寄った家電量販店のキーボード売り場で CHERRY MXスイッチを搭載したFILCO Majestouchに出会います。 それまで使っていたメンブレンキーボードが「ちょっとぐらつく」感覚だったのに対して、メカニカルは「スイッチを入れている」感覚でした。 なにより文を書いていて気持ちがいい!
この時点で「キーボードは道具として投資する価値がある」と認識が変わりました。
第3章: 引き算の始まり — FILCO Majestouch 91キー茶軸 2010年ごろ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| キーボード名 | FILCO Majestouch 91キー 茶軸 |
| キー数・配列 | 91キー / テンキーレス |
| スイッチ | CHERRY MX 茶軸 |
| 接続方式 | USB有線 |
「テンキー、使ってないな」
ある日ふと、そう気づきました。
経理や会計の仕事をしているわけでもなく、テンキーで数字を大量入力する場面はほとんどありません。にもかかわらず、テンキーの分だけキーボードの幅が広がり、右手がマウスに伸びるたびに腕を大きく動かしている。これは非効率です。
そこで選んだのが、同じFILCO Majestouchのテンキーレスモデル。キーの数は108から91に減りました。軸は黒軸と悩みましたが茶軸を選択。 「押した」というフィードバックを感じつつも、長時間のタイピングで指が疲れにくい絶妙なバランスでした。
テンキーを外しただけで、デスクの右側にスペースが生まれ、マウスとの距離がぐっと近くなりました。使わないキーを減らすことで、むしろ快適になる。この「引き算」の発想が、後の遍歴に大きな影響を与えることになります。
第4章: コンパクトとマルチデバイス — FILCO MINILA-R Convertible 2020年ごろ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| キーボード名 | FILCO MINILA-R Convertible |
| キー数・配列 | 66キー / 60%コンパクト |
| スイッチ | CHERRY MX 静音赤軸 |
| 接続方式 | Bluetooth 5.1(4台)+ USB有線 |
コロナ禍で在宅勤務が増え、仕事で使うデバイスもタブレット、スマートフォンと増えていく日々… コンパクトで持ち運びができ、複数デバイスとシームレスに接続できるキーボードがあればなあ! という思いは強くなる一方でした。そこで、これです。
コンボキー入力という発想
66キーの60%レイアウトでは、独立したカーソルキーがありません。その代わりに、スペースバーの左右に配置された「Fnキー」 を使ってコンボ入力を行います。
最初は違和感がありましたが、慣れてしまうとホームポジションから手を動かさずにカーソル操作ができるため、むしろ効率的です。
「物理キーを減らしても、コンボでいける」 — この気づきは、もっとキー数が少ないキーボードに手を出す背景となります。
マルチデバイス接続
もう一つのポイントはBluetooth 5.1による最大4台のデバイス切り替えです。仕事用PC、私用PC、タブレット…… それぞれにキーボードを用意するのではなく、 ボタン一つで接続先を切り替えられる。一台のキーボードを複数の環境で使い回せるこの便利さは、一度知ってしまうともう戻れません。 結局Corne を入手するまでは、メインのキーボードとして使っていました。
ここからは、肩こり対策で分割に手を出す道程が始まります。
第5章: 分割への一歩 — MISTEL MD600 2024年

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| キーボード名 | MISTEL BAROCCO MD770 |
| キー数・配列 | フルキー / 左右分離型 |
| スイッチ | CHERRY MXスイッチ |
| 接続方式 | USB有線 |
この頃から、肩こりが気になるようになっていました。
通常のキーボードでは、両手を体の中央に寄せるため、肩が内側に巻き込む(内旋する)姿勢になります。この姿勢が続くと、僧帽筋や肩甲挙筋に余計な負荷がかかり、肩こりの原因になると言われています。
「左右に分かれていれば、肩の内旋を防げるのでは?」
小型の分割キーボード、Corneの存在を知ったのがこのころです。ただいきなり分割だと合わなかったときのリスク高くないか? ということで自分の適性を確かめるために、もしダメでも分割しない形態でも使えるMISTEL MD600を手にしました。
このキーボードを使って、気がついたのは、本来左手人さし指で押下するはずの「B」のキーを右手で押す場合があったということです。 毎回というわけではなく、特定の文字列を入力するときだけ発動するのが気がつきにくいポイントでしたが、この際ということで修正しました。
分割いける! コンボが使えるのだから、コンパクトもいける!
ということでいよいよCorneに手を出します。
第6章: 40%および分割キーボード — Corne v4 Cherry

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| キーボード名 | Corne v4 Cherry(crkbd) |
| キー数・配列 | 46キー / 分割型 |
| スイッチ | CHERRY MXスイッチ(ホットスワップ) |
| 接続方式 | USB有線(左右間はTRRSケーブル) |
Corne(コルネ)は、foostan氏が設計したオープンソースの分割キーボードです。そのキー数は、わずか46キー。フルサイズの108キーと比べると、数字の上では半分以下です。ゆえに40%キーボードと呼ばれます。 「これで本当に仕事ができるのか?」という疑問はありましたが、分割状態への慣れとMINILA-Rで習得した「コンボキーで不足を補う」という考え方があったおかげで、移行は思ったほど難しくありませんでした。
Corneの真価は、VIA/VIALというGUIツールでキーマップを自由自在にカスタマイズできる点にあります。
- ホームポジションの下段を長押しすると数字レイヤーに切り替わる
- 左右の親指キーの組み合わせで記号を入力する
- 特定のキーの同時押しでショートカットを発動する
こうした設定を一つ一つ積み上げて、自分だけのキーマップを育てていく過程は楽しかったです。
第7章: 現在の到達点 — Cornix 2026年

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| キーボード名 | Cornix LP |
| キー数・配列 | 48キー / 分割型 |
| スイッチ | Kailh Choc V2(ロープロファイル) |
| 接続方式 | Bluetooth(3台)+ 左右間ワイヤレス |
| 筐体 | CNCアルミニウム |
| 特徴 | 5段階テンティング角度調整 |
Corne v4に大きな不満があったわけではありません。しかし、さらに快適な環境を求めた時に、いくつかの課題が見えてきました。
- 有線接続のケーブルがデスク上で取り回しにくい
- MINILA-Rで便利だったマルチデバイス接続がない
- 通常のMXスイッチは高さがあり、手首の角度が気になる
これらをすべて解決したのが、Cornixでした。
Cornixは、Corneの設計思想を継承しつつ、ワイヤレス化を実現した分割キーボードです。Bluetooth 3台接続で複数デバイス間をシームレスに切り替えられ、左右間の通信もワイヤレス。デスクの上にケーブルはありません。
Kailh Choc V2のロープロファイルスイッチにより、キーの高さが大幅に低くなりました。CNCアルミ筐体は見た目の質感も素晴らしく、5段階のテンティング角度調整で手首の角度を最適化できます。
振り返れば、MINILA-Rで求めた「複数機器接続」と、Corne v4で実現した「分割・コンボ」。この二つが一台に統合されたCornixは、私にとって現時点で最高のキーボードです。持ち歩いて日々仕事で使っております。
まとめ: キーボード遍歴から見えたこと
7台のキーボードを振り返ると、そこには一本の線が見えます。 30年かけて段階を踏んできたとも言えますね。
| 段階 | キーボード | キー数 | 得たもの |
|---|---|---|---|
| 出発点 | PC-9801付属 | フルサイズ | キーボード体験の出発点 |
| メカニカル | FILCO Majestouch | フルサイズ | 打鍵感への目覚め |
| テンキーレス | FILCO Majestouch | テンキーレス | テンキーレスキーボードでいける |
| コンパクト | FILCO MINILA-R | 60% | コンボ入力できる・マルチデバイス便利 |
| 分割 | MISTEL Barocco MD600 | テンキーレス | 分割キーボードいける |
| キーマップ | Corne v4 | 40% | キーマップカスタマイズ楽しい |
| 完成形 | Cornix | 40% | すべての統合 |
キーボード遍歴とは、自分の手と仕事に最適な道具を探す旅です。正解は人それぞれで、万人に合うキーボードはありません。でも、もし今のキーボードに漠然とした不満を感じているなら、「テンキーレスを試してみる」「分割キーボードを触ってみる」といった一歩を踏み出してみてほしいと思います。
