ソフトウェア設計レビューの効果を高めるには(マインド編)

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前回の技法編に続き、今回はマインドについてまとめてみたいと思います。

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大原則

  • レビューの目的「問題点摘出」を忘れない
  • レビューアは私情を持ち込まない
  • レビューイは問題点を指摘されたことを感謝する

これだけ忘れなければ、まっとうなレビューになるのではないかと思います。 それぞれについて忘れたときの懸念、忘れないためにすることを確認してみましょう。

レビューの目的を忘れない

なぜ、レビューをするのかというと、問題点を摘出して、テスト工程に入ってからの 手戻りをなるべくすくなくしたいからです。

忘れてしまうと...

  • アリバイ作りのためのレビュー開催
  • 指摘件数稼ぎのための指摘を量産
  • 摘出よりも解決策に議論が集中

となって、目的を達成できなくなってしまいます。

「アリバイ作りのためのレビュー」とは、レビュー完了が次工程に進むための 条件となっている場合、とりあえず、やった体裁を整えるために実施するレビューです。 残り期間が少なくなると陥りがちの問題です。

「指摘件数稼ぎ」は、レビューのなかで、目標となる指摘件数 が設定されている場合に陥りがちの問題です。誤字脱字ばかりを指摘したり、 レビューイ側が指摘件数を満たすために「わざと」間違いをするなどの 無駄が発生してしまいます。

「解決策に議論が集中」は、序盤のほうで、重大な問題が発生すると、 その解決策の議論が白熱してしまい、終盤までレビューが進まず、 最後のほうにある、問題が見逃されてしまう可能性が高くなります。

忘れないためには...

  • 期間的・時間的に余裕を持ってレビューを開催する
  • 目標指摘件数を設定しない
  • 解決策の議論のために、別途会議を開催する

レビューを「実施したことにする」と確かに予定通りのスケジュールに なるかもしれません。しかし、レビューを実施する目的は、後工程での 「手戻り」を防ぐことにあるのですから、ここで見つけたほうが 楽になると考えて、摘出を行えるように仕切るのが立場上 「えらい人」が徹底しなくてはならないことだと思います。

レビューアは私情を持ち込まない

複数人が参加する会議、そこで発生するのが「立場と私情の混同」です。 正直これを発生しないようにするのは、至難の業で、最上位者が まっとうな人間であることを願うしかないのではとも思います。

忘れてしまうと...

  • レビューイに対して人格攻撃に走る
  • 指摘をする際に必要のない形容詞を使う
  • スキル自慢(昔話)をはじめて会議が長引く
  • レビューア同士で意地の張り合いを始める

端的にいって時間の無駄です。 自分のスキルをアピールしたいなら、障害につながる指摘をしていただきたい。 人格攻撃するくらいなら、具体的にどうすればあなたのいうすばらしい 人格になれるのか、具体的に指示いただきたいものです。

会議中思い起こしてもらうためには...

司会者の立場であれば、会議の冒頭で問題点摘出に専念するように 宣言するのがよいと思います。会議中道筋それたときに軌道修正を試みるみましょう。

また、都度、参加者の間で、目的から外れた行動になっている ということを示しあえれば、円滑にレビューは進むでしょう。

被害を防ぐには...

お互いに「私情を持ち込んでいる」ことを指摘できるような関係が 築けているようであれば、そもそもこんな心配はしなくていいと思います。

他者を変えることはできないので「クソなやつは自分から変わらない限り クソなまま」という前提に立って行動しましょう。 (必要以上に強い言葉で攻撃しております)

以下、立場別の方針です。

レビューの場にいる最上位の人が自分ならば 発生したときに、「具体的に指摘するように」レビューアに伝えて 押さえ込む動きをとることくらいでしょうか。

それ以外の立場の時には被害(レビューイの萎縮、レビュー恐怖症)の 発生を防ぐことを考えましょう。

自分がレビューイの立場のとき、レビューアが年長者であることをかさにきて、 「センスがない」だの言ってきたときは、「具体的に指摘してきたこと」だけに集中しましょう。

自分がレビューアのときは、私情を持ち込まないように注意するのはもちろんですが、 人格攻撃をしたレビューアがいた場合、レビューイのフォローにまわって、 具体的な指摘事項の優先度の整理などを手伝ってあげてください。 と、同時に、あのレビューアはひどいと伝えてあげると 多少安心できるでしょう。

レビューイは指摘されたことを感謝する

問題点を見つけて手戻りの発生を防ぐことが目的なのですから 問題点を指摘されたことに対しては、まず「感謝」しましょう。

この後の工程も自分が担当する場合、その問題点がテストで見つかったら もっと苦労するのは自分なのですから。

忘れてしまうと...

  • 指摘の内容を軽んじる振る舞い
  • 言い訳をする

といった行動につながります。 感謝を忘れるということは、要するに、レビューアを軽んじるということです。 軽んじられた人が軽んじた人に怒りを覚えるのは、しかたのないことです。

  • レビューアの態度の硬化(人格攻撃の誘発)
  • レビューアの故意に指摘しない(テスト工程で苦しむがよい)

自分の作成したものの問題点を摘出する機会を失ってしまいます。 レビューアにも我慢が必要とは思いますが、わざわざ誘発する 必要はありません。

相手の感情に同調するというのは、相手と同じ高さに自分を 置いているということです。そこまで「プライド」「自負心」があるなら 作成したものの品質で勝負しましょう。

思い起こしてもらうには...

指摘歓迎!感謝!の思いを、会議の最初に宣言してしまうことです。 特にこれは、レビューアに自分より若い人がいるときに効果的です。 否定されない、反撃されないのであれば、思い切って指摘をしてもらえるでしょう。


以上のことができていれば、レビューを受けることが億劫になることを避けることができると思うのです。何が一番怖いって「誰も見ていない間に時間が過ぎている」ということなんですから…。

参考

なぜ重大な問題を見逃すのか? 間違いだら けの設計レビュー 改訂版

なぜ重大な問題を見逃すのか? 間違いだら けの設計レビュー 改訂版

レビュー比率と手戻り工数を見える化する