みんな誤解しているなら、それが新しい意味

とりあえず、若者はバカで日本語がなっておらんという文脈に落したいのかな、とこの手のニュース見るたびに思います。

誰も成し得なかったことをするという意味の故事成語「破天荒」を、40代以下の人の7割超が「豪快で大胆な様子」だと誤解していることが4日、文化庁が発表した2008年度の国語世論調査で分かった。「手をこまねく」などの言葉でも使い方を間違えている人が多かった。

時事ドットコム:「破天荒」は豪快で大胆?=40代以下、7割超が誤解-文化庁・国語世論調査 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009090400702
文化庁は4日、2008年度の「国語に関する世論調査」の結果をまとめた。8割近い人が「日本語を大切にしている」と回答する一方、「破天荒」といった言葉の意味を取り違えたり、慣用句の使い方で「采配を振るう」と間違えたりする人が約6割に上る実態が明らかになった。

NIKKEI NET(日経ネット):社会ニュース-内外の事件・事故や社会問題から話題のニュースまで http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090904AT1G0402104092009.html

今まで知らなかったのですが、これらの新聞記事の元になる調査まとめは、Webに掲載されているんですね。

文化庁 | 国語施策・日本語教育 | 国語に関する世論調査 http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/yoronchousa/index.html

というわけで、資料を見て思ったことを3つほどまとめます。

故事成語は字面に引っぱられやすい

「助長」や、今回の調査の「破天荒」は、中国の史書、四書五経といったものを出典としています。

ですが、

  • 「助長」は「伸ばそうとしてダメにする」から「伸ばすようにする」に
  • 「破天荒」は「誰も成しえなかったことをすること」から「大胆なさま」に

意味が変わってしまっています。 それぞれ、構成されている字の意味を素直に取ればわからなくもないです。

元のエピソードを知るための漢文の教育などをしなくなるのであれば、この傾向はますます強くなるんじゃないかと推測。 「白眉」が「年をとったと思うこと」とか、「四面楚歌」が「みんなで歌を歌うような楽しい宴会」みたいなことになったりして。

「破天荒」のように、ここまで違う意味が定着したら、もう辞書に載せてしまってもいいと思うのですが。

ほぼ半々で意味の認識が違う言葉は使うのが怖い

「御の字」「役不足・力不足」は違う意味にとる人の比率がほぼ半々です。 自分が「御の字」を「とてもありがたいことだ」という意味で使っても、相手には「一応OK」くらいのニュアンスで伝わっていると思うとこわくて使えません。 こういう「認識の違いを生みやすい」言葉について、もっとちゃんと報道してほしいです。

10代(16~19歳)のほうが正解率が高い場合もある

「憮然」や「的を射た」だと10代の正解率が高い。とくに「的を射た」は顕著に10代だけ高いです。 年を取っているほうが、必ずしも正解率が高いというわけではないということですね。 こういうことは、文脈に合わないから、あまり報道されないんだろうな。